キリンジ「エイリアンズ」歌詞解釈

キリンジといえば『エイリアンズ』。

グループの代名詞とも評価されているこの名曲の歌詞には一体どんな要素が含まれているのか。

有名な曲過ぎて敬遠したくもなりますが、、、

ただ、キリンジの歌詞解釈をする上では避けては通れない曲。

なので今回も歌詞解釈がんばってやってみようと思うのですが、

解釈をしようとすればするほど、言葉それぞれの意味を解釈することが間違っているようにも思えてきたんです。

よって、今回は歌詞の言葉を解釈する、というより、曲全体を通した解釈をしてみたいと思います。



作詞:堀込泰行 作曲:堀込泰行

遥か空に旅客機 音もなく公団の屋根の上 どこへ行く誰かの不機嫌も 寝静まる夜さバイパスの澄んだ空気と 僕の町
泣かないでくれ ダーリン ほら 月明かりが
長い夜に寝つけない二人の額を撫でて

まるで僕らはエイリアンズ 禁断の実 ほおばっては

月の裏を夢みて キミが好きだよ エイリアン

この星のこの僻地で

魔法をかけてみせるさ いいかい


どこかで不揃いな 遠吠え

仮面のようなスポーツカーが 火を吐いた

笑っておくれ ダーリン ほら 素晴らしい夜に

僕の短所をジョークにしても眉をひそめないで

そうさ僕らはエイリアンズ 街灯に沿って歩けば

ごらん 新世界のようさ キミが好きだよ エイリアン

無いものねだりもキスで 魔法のように解けるさ いつか


踊ろうよ さぁ ダーリン ラストダンスを

暗いニュースが日の出とともに町に降る前に

まるで僕らはエイリアンズ

禁断の実 ほおばっては

月の裏を夢みて

キミを愛してる エイリアン

この星の僻地の僕らに

魔法をかけてみせるさ

大好さエイリアン わかるかい


このタイトルの『エイリアンズ』

とってもチャレンジングなワードを使われています。

それでいてメロディの素晴らしさ。

メロディは感情の表現

このスローなマイナー調で感傷的なムードの中にも救いを感じる要素がメロディとして散りばめられているように感じました。


歌詞との兼ね合いの中で、

「夜、街が寝静まった静寂の中での二人のテレパシーにも似た無言の意思疎通」がこのメロディに表されている、という印象でした。


この曲を書かれた泰行さんは自書『自棄っぱちオプティミスト』内にて『エイリアンズ』の歌詞について、「高校生の時の恋愛の話」「地元埼玉の田舎を夜中彷徨っている子供達」と明かしておられました。

青く若い子供らの恋愛の要素が詰まっているんですね。


そういったご本人の解答を踏まえた上での個人的な所感を書きますね。


歌詞に登場する二人については、

社会から弾き出された外れ者同士という解釈をすればそれはとてもドラマチックですが、

なんてことない日常を特別なものにしたい

という泰行さんの思考があるならば、

むしろ平凡な二人を、視点を変えて特別なものに仕立てるような、憧れにも似た背伸びした感覚の方が近いのかも。


泰行さんの詩の書き方は

家庭用ビデオカメラで撮ってたものを映画のフィルムで撮ったらなんか絵になる!みたいな、この静けさも何かの序章に感じる!みたいな

演出に重きを置いた書き方

が多いように感じます。


それはこのエイリアンズでは特に。

一番の歌詞冒頭の、

遥か空に旅客機(ボーイング)

空に飛んでるのは「飛行機」でもよいところを「旅客機(ボーイング)」としてみたり、


二番のAメロでは、

仮面のようなスポーツカーが 火を吐いた

「かっこいいスポーツカーがエンジンをふかした」でもいけそうなところをこういった表現にしてみたり、

ただ、この表現によって日常のありふれた景色や出来事が何か情緒的に感じたり不穏な空気感を纏ったりと、異世界にワープしたような心地を味わえるところは泰行氏の演出の妙だと脱帽。


その最たる表現として「エイリアン」。もうホントに異世界のもの連れてきちゃった。。


特別な二人でありたい、という思いが

「この世界の常識に捉われない者」=「エイリアン」

という表現を呼び寄せたのかもしれません。


サビはほぼ全編裏声でそこにオクターブ下で歌うことでより異世界感の演出がされています。


「好き」や「大好き」と言った言葉はキリンジには似合わないくらいの直接的な表現ですが、その文脈のド頭に超変化球の「エイリアンズ」が付いていればむしろその「好き」という言葉に違和感を覚えます。

最後「大好きさエイリアン」って超違和感

ですもん。


内容の意味を探っていってもいいのですが、歌詞の言葉はどれもとても軽やかで、何かの意味に結びついている、というより

「こういう演出でムードを楽しんでくれ」

って感じがします。

泰行さんはこの歌詞を最後まで悩むくらい何度も書き直されたようですが、

色んな言葉の表現ができるからこその悩みだと思うので、ウィットに富んだ歌詞が多いのも、悩んだ中にも表現を考える楽しみもあったのではないかと思います。

「僕の短所をジョークにしても眉をひそめないで」なんて洒落てるなぁ、って、大好きな歌詞です。


今回は歌詞解釈、というより曲の世界観の解釈、となってしまいました。。。

『エイリアンズ』のヒットに関しては別の記事でもう少し考察をしていきたいと思いますが、

この曲のヒットの様々な要因の中で、歌詞によるこういった面白味がキリンジをさらに魅力的な存在にしていきますね。

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