キリンジ「風を撃て」歌詞解釈
作詞:堀込泰行 作曲:堀込泰行
香る夜を背に控えて待つ夕暮れが
誰の仕業? 崩れ落ちた
太陽に身を凭れトランペットが叫ぶよ
赤黒い雲 燻る闇の音色(トーン)
風を撃て!
左岸の向こうから
風を撃て!
流れ飛ぶ赤い
風を撃て!
黒い髪が乱れて
その暴れるシャツをなだめる間にパラッパッパ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
パラッパッパラ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
パラッパッパ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
ハードケース咽ぶ草の間に横たえて
遠く覗き込んだスナイパー
高架線をぬけて描かれるあの軌跡
煽る警鐘の叩きだした急速調(アレグロ)
風を撃て!
左岸の向こうから
風を撃て!
流れ飛ぶ赤い
風を撃て!
黒い髪が乱れて
その暴れるシャツをなだめる間にパラッパッパ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
パラッパッパラ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
パラッパッパ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
香る夜を背に控えて待つ夕暮れが
誰の仕業? 崩れ落ちた
太陽に身を凭れトランペットが叫ぶよ赤黒い雲 燻る闇の音色(トーン)
夕暮れから夕闇への移り変わりがウィットに富んだ表現で描かれており、
「太陽に身をもたれトランペットは叫ぶよ」は、夜になる直前の最後の太陽の光がトランペットを一層強い色に変える様。
真っ赤な太陽の光を受けた夜の雲に向け、すでに夜に包まれたこちら側の岸から放つトランペットの音色。といった情景が見えるようです。
風を撃て!
左岸の向こうから
風を撃て!流れ飛ぶ赤い風を撃て!黒い髪が乱れてその暴れるシャツをなだめる間に
パラッパッパ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
それは物体のない風を撃ち抜くかのように強く、感情の赴くままに、「流れ飛ぶ赤い」は太陽の赤、というより感情の高揚感の比喩のよう。海(川?)の波風が強く吹き荒れる中、主人公自体がトランペットの強く激しい音色と共に、何か大きなもの(障害や問題)に勇敢に立ち向かう姿が想像できます。
そしてそのトランペットの音は鳴らしては消え、鳴らしては消え、その強い音はどこに当たるでもなくフェイドアウェイしていく(消えていく)様は、自分の抑えようもない感情や葛藤、希望に対する不安を表しているかのよう。
ハードケース咽ぶ草の間に横たえて
遠く覗き込んだスナイパー
高架線をぬけて描かれるあの軌跡煽る警鐘の叩きだした急速調(アレグロ)
風を撃て!左岸の向こうから
風を撃て!
流れ飛ぶ赤い
風を撃て!
黒い髪が乱れてその暴れるシャツをなだめる間に
パラッパッパ パッパラ パッパラ フェイドアウェイ
所狭しと生い茂った草はらにトランペットのハードケースを投げ、まるで追ってから身を隠すように息を殺し、獲物を仕留めるスナイパーのごとくトランペットを構え、自分の追い求める対象物(たどり着きたいと願う目的地、夢)へ狙いを定める。高架に敷かれたレールを汽笛の合図で勢いよく走り去る列車の轟音に自らの感情の高揚感を重ね、それに引き出されるように思いの丈を奏でる。
って、書き方するとすんごいキザですね。。すいません。
二番の歌詞では一番とシチュエーションは違えど、自分の音楽を、自分の信じる進み方で聴く者の心を射止めたい、という強い思いがなんともニヒルな描き方で表現されてるように感じました。
結局その想いは、まだ結果の分からない今の自分の不安やもどかしさ、葛藤であるので、やはりそのトランペットの音はフェイドアウェイすることしかしないのですが、この曲では泰行さんの何度もトライ&エラーを繰り返しながら正解を探し続けるデビュー前の心情が現れた剥き出しの曲ですね。
作者である当のご本人はこの曲に関して「当時のくすぶってた気分は書き切れた」と、ミュージシャンとしての仕事がなく時間を持て余し、図書館などへ行って時間をたっぷり使って書いた曲だと当時を振り返っておられました。(キリンジ著「自棄っぱちオプティミスト」より)
なんだかまとまりのない解釈になってしまったかもしれませんが、
その努力と熱意が、その後のキリンジの唯一無二の個性を作り出していくんですよね。その個性は揺るぎなく強く輝きを放ち続けています。
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